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人々の叫び声が聞こえる。 死に怯える恐怖。死の境地に立たされると人間は他人のことなど考えない。 その姿は醜くあり、支配者からすれば愉快なものである。 命の支配者はその杖を振りかざした。杖からはイバラが飛び出し、城を覆う。 支配者は全ての生命を石化した。運命に選ばれた三人を除いて。 「これが・・・杖の・・・ぐわぁぁぁ」 支配者は杖を握り、喚いた。杖の力は絶大で、まるで心まで食われそうだ。 「ぐ・・・ぐ・・・・・ククッ・・」 数分の戦いは杖に軍配があがった。杖は道化師の心を支配した。道化師に乗り移った杖は闇に包まれた城の中、高らかな笑い声をあげた。 全てが憎い。 全てを壊したい。 こんな世界はあってはならない。 杖は力を発し、トラペッタにある民家を一瞬の内に墨へと変えた。その時、道化師が再び奇妙な叫び声を上げた。 「くわぁぁぁ」 頭が破裂しそうだ。 杖はその家の生命を吸収して強化された。それなのにどうしてそんな気分に。唯一の理性が消えてしまう。そんな感じの感情だ。 杖は次々に人を殺していく。 何故か無駄な殺しはせず、一定の人物を殺していく。 それは少女の兄であったり、院の長であったりする。 しかしいささか体を使いすぎたようだ。 元が道化師なのだから戦いの日々には耐えられないのもうなずける。杖は道化師の体を闇へとひきずりこむ。 嫌な予感がする。この闇の禍々しさ以外の何かが。道化師も、また杖もそれ自身を感じとっていた。しかし体を使っている杖にとってはこんなものはいわば飾り。飾りがなくなれば乗り移ればいいだけのことだ。 幾分か時間が過ぎた。悪に浸ると杖は回復をする。しかし中にいる道化師にとっては決して良い気分ではない。それでも徐々に慣れてくる。どんどん心が支配されているということだろうか。いずれはこの理性も完全に消えうせるのだろうか・・ そんな考えをよそに嫌な予感の親はやってきた。 怒りに操られた様々な感情を乗せて。 心身が壊れそうな感覚。 私はこの者たちに敗れた、ということだ。 体中が痛い。並の人間ならとっくに死んでいる傷だがこの杖は中々死なせてくれない。でも、そろそろ・・・ そんな思考をよそに杖は最後の使命を道化師の体に注ぐ冷たい感触。先ほどまで浸っていた悪が降り注いだ。 「うっ・・・ぐっ・・」 道化師は悪のかたまりに包まれ、完全に姿をかえた。そこには身も心も悪へと化けた愚か者の姿。 最初はちょっと杖に興味をもっただけだ。これを売れば金になるだろう。また、これをもてば逆らうものはいなくなるだろう。そんな軽い気持ちだった。 愚か者は神の裁きを受け、体を裂かれ、その場に倒れた。 体の核心をやられたので流石にもう復活はできない。 杖は道化師の体を離れ、彼はやっと長い呪いから解放された。死に顔は安らかであった。もちろんそれは誰にも気付かなかった。 「やった・・・?」 今ひとつこれといった感触がない道化師を倒した勇者達。何しろ姿を変えられる呪いがとかれていないのだ。 彼らは彼らなりの結論を出し、遺跡から引き返そうとした。 「あっ、待ってよ」 兄の敵をとれた悦びに浸っていた、あの頃のよりもずっとずっと大人になった少女は呼びかける。 彼女は持ち合わせた魔法の感性により、杖を気にとめる。兄をあの世へと送った忌まわしいものだ。 少女は杖を手に取り、後を追おうとした。 その瞬間、彼女の心身に激痛が走る。 「・・・っ・・!!」 声にならないほどの痛み。生半可な言葉では形容できないほどの感情。 その2つが一片に彼女の体に襲い掛かる。 「おーい、どうしたんだゼシカ?いくぞ?」 彼らの主格である少年が呼びかける。 「ええ。今いくわ。すぐに・・・」 少女はかけだし、後をついていった。 含み笑いを浮かべながら。 |